2020年10月tactor(タクター)の2021年春夏コレクションの展示会が渋谷にあるビルの一室で開催され、新作発表がなされた。テーマは「VOYAGE」。
日本はコロナウイルスの感染拡大により、4月以降、人と接触のある活動の自粛要請が発表され、多くの人が自宅にいなければならなくなった。デザイナー山本氏も影響を受け、整然と淡々とした生活の中で、服を着ることの喜びとは何か振り返ったという。
これまでtactorは街中で映える服を意識してコレクションを展開。デザイナー山本氏が提案する映える服とは、ただ派手な服ではなく憧れの人が着ていた服、プライベートで思い出のある服など、誰かに語れるストーリーがある。そして周りの人に魅せることが重要だった。しかし環境が変わり自宅での生活が多い中、個人の充足感を満たすモノづくりに考え方が変わったという。今シーズンはtactorを象徴する派手なグラフィックやラメ加工などが控えられ、落ち着きのある服で発表。着心地の良い生地や仕立てのいいテーラリングにこだわっていた。
また、これからの良い服とは、いい生地を使用することだけでなく、洗い方や保管の仕方まで服に丁寧に向き合うことが、大切になってくるという考えに至ったという。
例えば、今シーズン初めて裾にブランドのタグを入れているのは、他人に見せるより、鏡に映った時や、デスクワークでふとした時に見える位置を意識しており、「tactorを着ている」という充足感を満たせるよう考えられている。またハンドメイド感のあるフリンジをシャツに施しており、1点ずつ一手間加え服と向き合うきっかけを作っている。
今シーズンのコレクションテーマ「VOYAGE」は、先シーズンのテーマ「PUBLIC SCHOOL」の卒業からの旅立ちだけでなく、外に出る喜びと鞄に詰める服に1点1点向き合う時間の満足感も楽しんでほしいという二重の意図を筆者は読み取った。
Brand: tactor