2018年9月にYOHEI OHNO(ヨウヘイオオノ)の2019年春夏コレクションがレトロな雰囲気が残る、原宿ニューロイヤルビル8F「creme de la creme.studio」にて発表された。
会場はコンクリートの打ちっぱなしで窓からは街が一望でき、灯りは間接照明のみ。常に人でごった返しストレスを感じる渋谷エリアでリゾートにいるようなゆったりとした空気が流れていた。そこに大野氏がセレクトするインテリアと新作コレクションが並ぶ。「夏らしさと冷たさを意識した」とデザイナー大野氏は言う。
今回、展示会に伺って、YOHEI OHNOがブランドコンセプトにしている「無機質」とは「人と服の距離感」であると解釈した。今シーズンのテーマである「夏らしさと冷たさ」とは、人と距離があると感じる意識的な「冷たさ」と、春夏コレクションの服ならではの涼しさを感じるという感覚的な「冷たさ」を掛け合わしていて、言葉の使い方もユニークだ。
これまでインテリアプロダクトの要素、一般的な服とは違う構築的な考えや生地感を取り入れ、いかに服を「無機質」なものとして表現できるかを試みてきた。しかし今シーズンはファッションとして身近に感じるアイテムを使用しながらも、服から遠いものに捉えることができるかという逆からのアプローチのようだ。例えばトップはタイトなラインで、ボトムの広がりが魅力的なフィットフレアワンピースは象徴的で、極端にフレア感を強調するために、腰部分にウレタンのパッドを仕込み、クラシカルなドレスを彷彿させるシルエットに仕上げた。ウレタンパッドは脱着可能で、外すとストレートなシルエットになり、日常生活でも着られる仕様となっている。パンツもフィットフレアのデザインで女性らしさを取り入れたアイテムが揃うコレクションとなっている。
YOHEI OHNOの初期のシーズンは、グラフィックを用いて無機質なものと交わることで、他にはないインパクトがあった。ここ数シーズンはその要素を削ぎ落とし、素材と色数で展開していることについて「このブランドらしいものをシルエットで表現できるようになった」と大野氏はコメント。定番化している、肩から腕にかけて丸みを帯びたジャケットは、通常は、テーラードを作る仕立ての専門知識が必要だが、それを省き、素材感と構築的な縫製でジャケットをつくるという発想から生まれたシルエットである。服を作る工程をデザインするというブランドイズムは続いているようだ。
YOHEI OHNOは、「インターナショナル・ウールマークプライズ」の2018-19年度のアジア予選大会で、ウィメンズウエア部門で優勝した。2019年2月にロンドンで開催されるグローバル大会に出場が決定している。この大会はザ・ウールマーク・カンパニーが主催する次世代の才能発掘のためのグローバルデザインアワードで、今年は世界46ヶ国以上、300人以上の新進デザイナーが応募したという。新しいアプローチから洋服を提案し挑戦するデザイナーに日本のブランドの大野氏が選ばれ、今後のブランドのクリエイションや日本国内外での活躍にも注目していきたい。
Brand: YOHEI OHNO