2019年3月、tactor(タクター)の2019年秋冬コレクションの展示会が渋谷TOCビルの一室にて開催され、新作発表がなされた。テーマは『EXPOSE』。
今季はこれまで発表してきたコレクションの中でも一番ベーシック。ホワイト、ベージュ、グリーン、ネイビーと一般的に馴染みのある色が揃う。テーマの「EXPOSE」には自分をさらすという意味が込められている。デザイナー山本氏が得意とするグラフィックやラメ素材など一目でわかりやすいものではなく、普遍的なアイテムに少し角度を変えてブランドらしさを出していく。例えばロングシャツは左右が違う型をしていて、ハリのある綿生地と艶があり柔らかいサテン生地と使い分け、シャツの表情を変えている。ブランドのアイデンティティである2種類の違う分野を一着に混ぜるスタンスを、色や柄ではなく素材の質感で変わるシルエットで一着に込めた。
また山本氏は、全身が隠れる和装が、たまに見える肌がセクシーに感じることに着目した。身体と服との隙間にセクシーに感じる要素があり、ポイントは”少し”であることが重要で、そこに女性らしさとしての品がある。コレクションでは少し艶やかな生地を使用し、パンツに少しドレープで動きをつけ、ジャケットには女性のラインを考慮しつつ少し生地の分量を多くし隙間を表現した。
tactorというブランド名には”tactile(触れる)”という言葉が隠されている。艶やかなものや隙間があると手を入れてみたくなったり、一目で分かるより隠されている方が魅力的に感じたり、人間の心に少し触れる要素がコレクションに反映されている。
「今だからこそ女性らしさ、女性だからこそ似合う要素を込めたい」と山本氏はいう。現代は性別を男性、女性と2つに分けず、同性愛、トランスジェンダーなど性が多様化する中で「男性らしい、女性らしい」という言葉は息苦しく感じてしまうだろう。そんな中、女性が女性として美しくあるという意味での「女性らしさ」は尊重されるべきだ、というポジティブな考えが山本氏の言葉に込められているように感じた。
Brand: tactor